海事アカデミア2022
 印刷 2022年02月24日デイリー版1面

インタビュー 外資大手の日本戦略】西濃シェンカー社長・オン・シュウウェイ氏。5年で事業規模2倍に

西濃シェンカー社長 オン・シュウウェイ氏
西濃シェンカー社長 オン・シュウウェイ氏

 独DBシェンカーとセイノーホールディングス(HD)の合弁会社西濃シェンカーは、事業体制の変革に取り組む。昨年9月に社長に就任したオン・シュウウェイ(王秀薇)氏の下、デジタル化、人材の多様化、サステナビリティー(持続可能性)への取り組みを加速する。フォワーディングと物流を中心にシェアの拡大を図り、5年後には事業規模を2倍に拡大する目標を掲げるなど一段の成長を目指す。オン氏に現状と今後の舵取りを聞いた。(聞き手 梶原幸絵)

 ――日本での抱負を。

 「他国の知見とグローバルで培った経験を生かし、日本のロジスティクス・サプライチェーン産業の発展と業界で働く人々に貢献したい。日本は仕事でも休暇でも何度も訪れており、親しみを感じている」

■CL事業安定

 ――日本事業の現状は。

 「半導体、エレクトロニクス、ヘルスケア、自動車関連を中心に顧客の物流需要は力強い伸びを見せている。事業別では、コントラクトロジスティクス(CL、物流一括受託)は安定しており、中でもエレクトロニクスやクラウド関連、ラグジュアリー分野の需要が高水準で推移している」

 「海上・航空フォワーディングの需要も強いが、チャレンジングな状況だ。新型コロナウイルスによる国境やターミナルの制限強化、各国の労働者不足、旅客便の減便などでキャパシティーが大幅に減少し、北米・欧州への輸送に大きな支障が出ている」

 ――混乱への対応は。

 「当社が長年提供する代替ソリューションへの需要が高まっている。ドバイまで海上輸送を使い、そこから欧州に航空輸送するシー&エア・サービスなどもある。緊急の航空輸送需要に対しては欧州、米国向けの定期チャーター便を提供し、スポットチャーターも手配している」

 「航空や海上のキャリアーと強い関係を構築し、事前にキャパシティーを押さえていることもグローバルプレーヤーとしての強みの一つだ。日本とシンガポール、ドイツ本社で情報を共有し、購買を最適化している」

 ――日本事業の業績は。

 「昨年は国際輸送やCLの強い需要に支えられ、東京五輪関連の輸送も寄与したので非常に好調だった。今後は年率20%成長を目指し、日本の事業規模を5年間で2倍に拡大したい」

 「日本発着の航空・海上フォワーディング市場における当社のシェアは決して大きくないので、まだまだ伸ばす余地がある。CLは当社が中核とする強みの一つ。テクノロジーとグローバルなノウハウ、実行力、卓越したオペレーションを組み合わせて提供しており、顧客と共に成長していけることに喜びを感じている。陸送や物流施設の開発では、合弁パートナーのセイノーHDと強い協力関係にある。今後もグローバルな技術力を活用し、ソリューションの拡充とデジタライゼーションを続けていく」

 「当社は今年、設立20周年を迎える。DBシェンカーは1964年に日本に進出し、セイノーHDとは2002年に当社を設立して多くのプロジェクトで協業してきた。グローバルプレーヤーであるDBシェンカーと、日本国内で非常に強く幅広いネットワークを張り巡らせるセイノーHDグループの協業には、今後も大きな可能性とシナジー(相乗効果)があるとお互いに認識している」

■常に進化を追求

 ――日本事業に課題はあるか。

 「日本に限ったことではないが、スピード感を持って柔軟に変化し、テクノロジーを駆使してプロダクトとサービスをアップグレードし続けることを課題としている。ロジスティクス産業は顧客のニーズに合わせて常に進化を求められてきた。いまはスピードと効率、精度を最大化するための高度なソリューションが不可欠になっている」

 「日本のデジタル化、自動化、ロボット化をさらに推進していきたい。私自身はグローバルなバックグラウンドを持ち、世界各国でサプライチェーンのさまざまなセグメントに携わってきた。特にロジスティクスを基幹産業と位置付け、デジタル化でも先進的なシンガポールを参考にする」

 「また、最も重要なことはロジスティクス業界に人材を呼び込むことだ。シンガポールではインダストリアル・エンジニアリングや自動化の専門家がロジスティクス産業で活躍している」

 ――日本は製造分野に比べ、物流分野のデジタル化・自動化が遅れていると言われている。

 「日本のロジスティクスにはまだまだ進化していく余地がある。デジタル化を加速するに当たっては、DBシェンカーが世界中で蓄積してきた知見からトップレベルのものを展開できる。これに顧客のニーズに合わせた日本独自の取り組みを組み合わせていく」

 「現状、国内ではBtoC(企業発消費者向け)物流のCL(コントラクトロジスティクス)業務などで自動化機器を導入している。フォワーディングでは書類作成などにRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用しており、社員はより付加価値の高い業務に集中できる」

 「社内では新型コロナウイルス禍以前からノートパソコンを従業員に貸与し、ウェブ会議用アプリケーションなども導入していた。結果、コロナ禍でもスムーズに在宅勤務体制に移行でき、競合他社との差別化につながった。ただし、テクノロジーを使う目的は当社や業界の進化のためばかりでない。顧客の利便性向上も重要だ」

■選ばれる会社に

 ――人材の確保にはどう取り組むか。

 「当社はジェンダー・ダイバーシティーを重視しており、性別に関係なく個々人の才能を評価する。サプライチェーン産業は歴史的に男性中心だったが、当社のマネジメント層では女性が複数活躍している。今後もより多くの女性が業界にジョインし、リーダーとして力を発揮していくよう後押ししたい。『ピープルファースト』を中核に企業活動を続け、『選ばれる会社』を目指す」

 ――サステナビリティー(持続可能性)への取り組みは。

 「DBシェンカーはサステナビリティーを重要課題とし、その一環として2022年にEV(電気自動車)・トラックを導入するなどサプライチェーンの脱炭素化にも取り組んでいる。昨年はルフトハンザカーゴと協力し、世界初の航空代替燃料SAFを100%使用する定期貨物便の運航を中国―ドイツ間で始めたが、需要があれば日本にも導入を検討する」

 「多国籍企業、グローバル顧客のサステナビリティーに対する意識は非常に高い。今後は日本でも重要性が増すだろう」

 オン・シュウウェイ(王秀薇) 05年にシェンカー・シンガポールに入社。アジア太平洋地域オフィスでキャリアを積み、同地域CCO(最高商務責任者)、シェンカー・フィリピンのCEO(最高経営責任者)などを経て、21年9月から現職。DBシェンカー北東アジア担当CEOを兼務。