JILSウェビナー、海上コンテナ輸送「終わりの始まり」か。国際物流の混乱、有識者ら討論
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)は9日、国際物流混乱の先を見据え、SCM(サプライチェーン・マネジメント)の在り方を探るセミナーをオンラインで開いた。有識者と国土交通省の講演、パネルディスカッションで、海上コンテナ輸送の持続可能性に疑問が呈されるなど今後のロジスティクスでパラダイム・シフトが起きる可能性が示された。そうした構造変化を捉えて日本の物流業界が次世代のデファクトスタンダードを取ることも可能だが、「標準化」がハードルになるという。
ウェビナーでは、海上コンテナ輸送など国際物流の混乱、マクロ経済動向などについて、みずほ銀行産業調査部統括チームの相浜豊参事役、国交省の大坪弘敏大臣官房参事官、NX総合研究所の田阪幹雄リサーチフェロー、ニューズフロントGAFA総合研究所の小久保重信主席研究員、JILS総合研究所の遠藤直也氏が講演した。その後にパネルディスカッションを行った。
田阪氏によると、グローバルロジスティクスで今後10―20年以内に予想される連続的変化として、非接触化・自動化・無人化・省人化、モーダルシフトなどが挙げられる。
30―40年後には国際間輸送でパラダイムシフトが起こる可能性があるという。世界のコンテナ輸送は中国・アジア発欧米向けの荷動きが圧倒的に多い片荷のため、需給バランスが狂えば空コンテナの極端な偏在が起こり、大きな混乱を引き起こす。
今回の混乱では新型コロナウイルス禍でコンテナ輸送システムの脆弱(ぜいじゃく)性があらわになったとも言え、田阪氏は「コンテナ輸送システムの『終わりの始まり』の可能性もあるのではないか」と話し、「コンテナ輸送システムが今後100年持つのか考え、ロジ業界全体に非連続な変化が起こる可能性を踏まえる必要がある」と提言した。
企業のサプライチェーンが地産地消の方向に進めば、部品や製品が国境を越えて物理的に移動するのではなく、素材などの原材料と製造情報の移動が主流になる可能性もあるという。
大坪参事官は国際物流の混乱について「新型コロナをきっかけに一時的ではない構造変化が起きていると認識を改める時期に来ている」と述べ、企業は単に輸送に関する問題としてではなく、経営効率まで考慮して全社的に問題を考える必要があると指摘した。
変化を捉えて日本のロジ、物流品質を海外に普及させるには標準化が必要になるという。ISOコンテナの輸送システムが国内輸送まで広がらず、独自の輸送容器の規格が存在する日本では、パレットやその他デバイス、オペレーションの標準化も進んでいない。
情報システムの導入に当たっても、データ形式やコード体系の標準化が行われず、労働生産性の向上やDX(デジタルトランスフォーメーション)の妨げになっている。ウェビナーでは標準化の参考例として、米アマゾンや大手小売業を基点とした標準化の例が示された。