海事アカデミア2022
 印刷 2022年01月26日デイリー版1面

商船三井など、敦賀から境港へ無人運航。営業コンテナ船で世界初

無人運航を行った「みかげ」
無人運航を行った「みかげ」
(左から)三井E&S造船・船津勇社長、商船三井・山口執行役員、日本財団・海野常務理事、古野電機・石原眞次取締役、井本商運・大橋郁取締役、A.L.I. TECHNOLOGIES・伊藤英事業開発ユニットリーダー
(左から)三井E&S造船・船津勇社長、商船三井・山口執行役員、日本財団・海野常務理事、古野電機・石原眞次取締役、井本商運・大橋郁取締役、A.L.I. TECHNOLOGIES・伊藤英事業開発ユニットリーダー

 世界初となる営業コンテナ船の無人運航実証実験が24日から25日にかけて行われた。敦賀港(福井県)から境港(鳥取県)まで約270キロメートルの航海で、離桟から夜間運航、着桟までを無人運航で完了させた。日本財団による無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」の一環で、商船三井をプロジェクトマネージャーとするコンソーシアムが実施。同じく世界初の試みとなるドローン(小型無人機)による係船補助作業なども行われた。

 25日、境港での着岸が報道陣に公開された。日本財団とコンソーシアム参加企業は同日、境夢みなとターミナルで会見。日本財団の海野光行常務理事は「横須賀での小型旅客船、門司での大型カーフェリーに続く実証実験第3弾。無人運航船が切り開く、未来の可能性を感じていただきたい」「少子高齢化は日本の課題だが、内航海運も船員の50%超が50歳以上。船員不足でもあり、1人当たり労務負担が大きくなっている。また、海難事故の8割が人的要因とも言われる。これに対して、船舶の無人化・自動化が大きな課題解決策となる」「個社の取り組みでは時間がかかり、国際標準化の主導権が握れず、競争に後れを取る。オールジャパンでプロジェクトを推進するため、日本財団として民間主導を後押ししていく」と、一連のプロジェクトについて説明した。

 商船三井の山口誠執行役員は「無人運航に係る技術は、船長や安全運航に携わる人間のサポートがしっかりできることが、安全性を高めるポイント。本プロジェクトを通してヒューマンエラーを予防し、事故を減らすことを目指す」と語った。

 コンソーシアムメンバーからのあいさつ後、商船三井スマートシッピング推進部の鈴木武尊スマートシップ運航チームリーダーから、実証概要説明が行われた。

 今回の実証実験では、商船三井グループのほか、三井E&S造船が主に操船制御システム、古野電機が主にセンシングやAR(拡張現実)ナビゲーションシステム、井本商運が船舶・船員の提供、A.L.I. TECHNOLOGIESがドローンによる係船支援などで参画した。2月には同コンソーシアムで、商船三井フェリーの大型カーフェリーでの無人運航実証実験も行われる予定。

 今回、無人運航の実証実験に成功したのは、内航コンテナ船「みかげ」。船型は内航船の約1割を占める主力船型749総トン。船長の監督の下、無人運航を行った。

 今回のプロジェクトでは、他船検出センサーとして用いられるAIS(船舶自動識別装置)とレーダーに加えて、可視光カメラと夜間対応の赤外線カメラを搭載。AI(人工知能)学習による他船検出システムを開発した。また、検出した他船の動きに基づき、衝突を避ける自律操船システムも開発した。

 着桟時はGNSS(衛星測位システム)に加え、LiDARなどのセンサーも併用。より正確な位置情報収集と、フィードバックを行うことで、安全に着桟作業を完了した。

 また、船を岸壁に係留する際、ロープを手繰り寄せるヒービングラインを、ドローンによって運搬するシステムのトライアルも実施した。同システムが導入されれば、船員の負荷も軽減され、荒天時などでも安全・効率的な係船作業に寄与すると期待されている。

 海野常務理事は今後の無人運航での課題として、法整備や事故などが発生した際の責任の所在、監視センターなど陸上側のインフラなどを挙げた。

 MEGURI2040ではステージ1で、5コンソーシアム・6隻の実証実験を行う。総事業費は約88億円で助成金総額は約74億円。今回のコンソーシアムの事業費は13億8900万円で、うち助成金は約11億円。ステージ2で、2025年に無人運航船の本格的な実用化を目指す。