海事アカデミア2022
 印刷 2022年01月21日デイリー版1面

スカパーJSAT、ケーブル敷設船 初導入。海洋VSAT新サービス

JSATMarineで利用されるHTS(スカパーJSAT提供)
JSATMarineで利用されるHTS(スカパーJSAT提供)

 衛星通信アジア最大手のスカパーJSAT(本社・東京都港区)の新しい船陸間通信VSATサービス(海洋ブロードバンドサービス)が、ケーブル敷設船で導入された。今月スタートした新サービス「JSATMarine」の導入は、国内外で今回が初となる。「JSATMarine」は対象エリアを絞り込みながら、通信速度を世界最高レベルの50メガビット毎秒に高速化した。スカパーJSATは快適なインターネット接続環境創出による船舶のDX(デジタルトランスフォーメーション)促進や、船員の福利厚生の拡充に向け、新サービスの利用拡大を目指す。

 エヌ・ティ・ティ・ワールドエンジニアリングマリン(NTT―WEマリン、本社・横浜市)が、保有するケーブル敷設船「きずな」(8598総トン、2017年竣工)で導入した。利用プランは、下り(陸から船)が最大30メガビット毎秒、上り(船から陸)最大3メガビット毎秒となる。

 日本無線がアンテナ供給などを含め一括して通信サービスを提供する。NTT―WEマリンはさらに入渠中の「SUBARU」(9557総トン、1999年竣工)でも導入する予定。

 スカパーJSATは、Kuバンド(12ギガ―14ギガヘルツの周波数帯域)の海洋ブロードバンドサービスとして、10年から通信速度が最大2メガビット毎秒の定額型「OceanBB」を開始。18年には、通信速度が最大10メガビット毎秒の従量課金型「OceanBB plus」(最大4メガビット毎秒の定額サービス含む)をスタートしている。対象エリアは共に全世界の主要航路をカバーしている。

 「JSATMarine」は、対象エリアを日本とその近海(東アジア、東南アジア)―中東に限定。対象エリアは狭くなるものの、スカパーJSATが保有する高速大容量通信衛星(HTS)を利用することで、通信速度を世界最高レベルに高速化した。衛星のほか、地上からコントロールする衛星管制センターも主局の横浜衛星管制センター(横浜市)をはじめ自前で、スカパーJSAT独自設備による一気通貫サービスとなる。衛星管制センターでは、再生可能エネルギーで発電する電力を利用し、脱炭素化に貢献する。

 NTT―WEマリンでは、これまで船陸間でのオンライン会議は行うことができなかったが、「JSATMarine」導入で、試験的にビデオ会議システムを利用し陸上との会話が成立することを確認。敷設作業中に船上で解決できない問題などが発生した場合、今後は動画送信などによる陸上と連携した迅速なリアルタイムでの対応実現も見込む。さらに、高速通信の実現により、インターネット環境が整っていることを重視する若年者にも配慮し、船員の確保につなげる。