海事アカデミア2022
 印刷 2022年01月19日デイリー版1面

パナソニック、顧客起点 SC効率化。米大手ブルーヨンダーと協業加速

 パナソニックは昨年9月に完全子会社化したサプライチェーン(SC)ソリューション大手の米ブルーヨンダー(Blue Yonder、ワード参照)との協業を通じ、顧客のグローバルSC効率化に取り組む。両社の強みを合わせ、顧客の現場を起点に、顧客の課題解決につながるソリューション構築の検討を加速する。得意としてきた製造業での競争が激化する中、IoT(モノのインターネット)技術など、モノづくりで培ったノウハウ・機能を、成長性が高いSC領域でも展開していく。

 パナソニックとブルーヨンダーは2019年4月、戦略的パートナーシップを発表した。パナソニックは翌20年7月、ブルーヨンダーに20%出資。昨年9月に残る株式80%を取得し、買収を完了した。全株式取得額は78億9000万ドル(約8633億円)。ブルーヨンダーのギリッシュ・リシCEO(最高経営責任者)ら幹部陣は、継続してブルーヨンダーの経営に携わる。

■混乱時に必要な機能

 SCソフトウエア市場は、WMS(倉庫管理システム)、TMS(輸送管理システム)など実行系、販売・生産計画策定などの計画系、可視化ソリューションなどで構成される。それぞれの機能を提供する競合ソフトウエア企業は少なくないが、ブルーヨンダーは需給予測、可視化など、SCで求められるさまざまな機能を、デジタルプラットフォーム(PF)「Luminate」上で提供できるのが強みだ。

 パナソニック・現場プロセス本部の竹内俊一氏(ブルーヨンダー協業推進総括)は「(WMSなど)個別のプロダクトではなく、トータルソリューションを提供できる点が、ブルーヨンダーの差別化要素だ。コンテナ不足、滞船などでグローバルSCの混乱が続く中、アジャイル(俊敏)に対応できるソリューションが望まれている。そういった企業に、ブルーヨンダーのソリューションを活用いただいている」と説明する。

 昨春発生したスエズ運河でのコンテナ船座礁事故では、SCの混乱が深刻化した。ブルーヨンダーのある顧客は、自社貨物を積んだコンテナ船約40隻、コンテナ約200本を、PF上で可視化し、動静を把握。在庫の横展開や、他製品のへの生産切り替えなど、さまざまな経営上の意思決定に役立てたという。

 部品の供給遅延などが可視化によって把握できた場合でも、代替品の調達、工場のラインの切り替えといった判断は、計画系ソリューションとの連携が、代替品が適切に輸送できるかなどの確認は物流ソリューションとの連携がそれぞれ必要となる。共通性を持ってデータを把握し、SCをエンドツーエンド(発着両端)で網羅することができるため、迅速な判断が可能になる。

 需給予測では、過去のデータなどをマシンラーニング(機械学習)で分析し、天候など販売に影響のあるデータ(コーザルデータ)なども加味して、AI(人工知能)による販売計画策定を行う。

■両端まで把握を

 SCは、1企業だけでなく、パートナー企業との連携の中で構築される。また、企業内でも、販売、調達、生産など各部署間で利害が対立する。このため、他の組織にSC上の問題を外部化することで、表面上解決させてしまうことも珍しくない。

 「ブルーヨンダーはSCをエンドツーエンドで効率化することに重点を置いている」(竹内氏)

 同社のPFでは、パートナーや社内複数部門も含めた、SC全体を可視化し、納期や生産能力などさまざまな制約条件を組み込んだSC計画を立案できるため、経営層がより適切な判断ができるようになる。

 GHG(温室効果ガス)排出量なども可視化していく。今後、サプライチェーンでの炭素排出量は、スコープ1(直接排出量)・2(間接排出量)だけでなく、調達・出荷など上流・下流も含めた間接排出量全てをカバーする「スコープ3」での算出が求められるようになる。顧客がソリューションを導入することで、GHG排出量をどれだけ削減できるかといった定量化も今後進める。

 ブルーヨンダーの顧客層は、グローバルでは電機や自動車など組み立て系、鉄鋼・半導体などプロセス系の製造業、大手リテーラー・CPG(消費財)など流通業が中心。日本でも電機、鉄鋼、ハイテクなど製造業で、これまでの買収企業の顧客基盤がある。

 パナソニックはこれまで、音声や映像などの分野でAIを活用したソリューションを開発してきた。また、デバイス、センシング、ロボティクスなどを通じた現場からの情報収集も強みとしており、ブルーヨンダーのソリューションとの親和性も高いと見ている。

 パナソニックでは、顧客の課題解決につながるポートフォリオを持つことを重要視しており、ブルーヨンダーの具体的な連携については、今後協議を進める。「パナソニックのハードと、ブルーヨンダーのソリューションをつなげて、というようなプロダクト先行の考え方はしない。顧客の課題がどこにあり、われわれがどのようなソリューションを提供できるか。ブルーヨンダーが擁する3000社以上の顧客を起点にしながら、検討を加速していく」(竹内氏)

 ブルーヨンダーとの連携窓口となるのは、社内カンパニーのコネクティッドソリューションズ社(CNS)。CNSは4月から事業会社「パナソニック コネクト」として新体制に移る。

 【ワード】

 ブルーヨンダー 流通業を顧客としたサプライチェーンソリューション大手の米JDAソフトウエアを母体とする。JDAは90年代後半からM&A(合併・買収)による成長を進めており、06年にマニュジスティクス、10年にi2テクノロジーズなど、日本でも事業展開する同業企業を買収した。12年には倉庫管理システム大手レッドプレーリーと経営統合。18年にAI・機械学習を活用したサプライチェーンソリューションを提供するブルーヨンダーを買収。20年、買収した「ブルーヨンダー」に社名を変更した。