海事アカデミア2022
 印刷 2022年01月18日デイリー版6面

イノカ、国内初 完全人工環境下でサンゴ抱卵実験に成功

東京工業大学の中村隆志研究室の顕微鏡で撮影
東京工業大学の中村隆志研究室の顕微鏡で撮影

 東大発サンゴベンチャーのイノカ(東京・虎ノ門)はこのほど、人工的にサンゴ礁の海を再現した閉鎖系水槽(同)でサンゴ(種目・コユビミドリイシ)の抱卵時期のコントロールに国内で初めて成功した。今回再現性の高い完全人工環境下での抱卵実験に成功したことで、自然界では多くのサンゴ種が1年に1度と限定的な抱卵を、人為的に導くことが可能となった。今年中に国内初の完全人工環境下でのサンゴ産卵が成功するよう、実験を継続している。

 今回抱卵の判定については、黒潮流域の生態系に関する調査研究を手掛ける黒潮生物研究所の目崎拓真所長に、画像データを基に確認してもらった。実験は、同社が管理する水槽で2年以上飼育し、2021年8月時点で抱卵が確認されなかったサンゴを使用した。

 イノカは独自技術の環境移送技術を使い、完全人工環境下でサンゴの健康的な長期飼育に成功。完全人工環境とは、人工海水を使用し、水温や光、栄養塩などのパラメーターが独自IoT(モノのインターネット)システムで管理された水槽(=閉鎖環境)を指す。

 今回の実験では、環境移送技術を活用し、沖縄県瀬底島の水温データを基に、自然界と時期をずらして水温を同期することで、抱卵時期のコントロールに成功した。

 サンゴは人間の社会生活を支える上で必要な護岸効果や漁場の提供、医薬品の発見、建築材料や生活の道具の材料といった重要な役割を果たしている。ただ、20年後には気候変動に伴う海水温の上昇でサンゴ礁の70―90%が消滅する可能性が高いといわれており、海の生物多様性やそこから生まれる経済価値を守るためにサンゴ礁の保全は最重要課題という。

 イノカは、20年9月には商船三井と共同でモーリシャスの環境回復などに取り組むと発表。商船三井が主導するモーリシャスの「自然環境保護・回復プロジェクト」に参画している。