海事アカデミア2022
 印刷 2021年11月04日デイリー版1面

インタビュー eモビリティー新潮流捉える】バンプーコーポレーションCEO・ソムルディ・チャイモンコン氏、脱炭素へ事業転換 加速

バンプーコーポレーションCEO ソムルディ・チャイモンコン氏
バンプーコーポレーションCEO ソムルディ・チャイモンコン氏

 タイ石炭開発大手バンプーコーポレーションは再生可能エネルギーなどクリーンエネルギーへの事業転換を加速している。また、タイ政府が推進するEV(電気自動車)促進政策などに呼応し、eモビリティー(モビリティー〈移動体〉の電動化)にも積極的に取り組む。日本のEV開発企業FOMMに2割超出資するほか、電動フェリー(EVフェリー)も開発。シェアリングサービスなどと合わせ、新たな消費のトレンドを捉える考えだ。ソムルディ・チャイモンコンCEO(最高経営者)に、船舶を含むモビリティーの電動化などについて、書面インタビューを行った。

(タイ・高木正雄)

■25年に環境型5割

 ――バンプーはタイ最大の石炭開発企業だ(注)。石炭事業からグリーン事業への転換の狙いを教えてほしい。

 「われわれは3D(脱炭素化、分散化、デジタル化)をエネルギー消費のメガトレンドとして理解し、われわれのビジョンとミッション、ビジネス戦略を再定義することで、これらのトレンドと親和性を持たせた」

 「バンプーは多様なエネルギーを世界的に供給する企業だ。米国や日本を含むアジア太平洋地域10カ国で、エネルギーに関する専門知識を備えた最高水準のエネルギーソリューションの提供を目指している。エネルギー開発・生産・技術の中核3事業を統合し、事業間の相乗効果を促進するビジネスエコシステムの構築に努めている」

 「『持続可能性のための、よりスマートなエネルギー』を世界に提供することが究極の目的だ。近年は石炭や火力を超えて多様化し、再生可能エネルギー、次世代への橋渡し技術としての天然ガス、エネルギー技術と、事業を急速に拡大してきた」

 「石炭事業での事業拡大は少ないが、石炭事業の炭素排出量を削減しながら、顧客に製品とサービスを提供し続ける責任がある。さらに、われわれは再生可能エネルギー発電プロジェクトを支援するために鉱山地域の開発・活用を進めている。豪州では太陽光発電所と風力発電所を開発しており、最終的には稼働中の全ての炭鉱で使う100%の電力を供給し、可能な場合は主要送電網にも電力を供給する」

 「2030年までのエネルギー需要を見ると、石炭事業は依然として全体の約25%を占めるだろう。ただし、長期的には、より環境に配慮した事業分野が成長し、石炭の事業全体に占める割合は低下する。25年までに、バンプーのEBITDA(金利・税引き・償却前利益)の50%が、環境対応型の事業からの貢献となる見通しだ」

 ――バンプーの総発電能力に占める再生可能エネルギーの割合はどの程度になるか。

 「バンプーは25年までに発電能力6100メガワットの達成を目標とするが、うち4500メガワットが、HELE(高効率で低炭素排出量)技術に焦点を当てた火力発電所から供給され、全体の約26%に当たる1600メガワットが再生可能エネルギーからとなる。今年4―6月時点の総発電能力は4317メガワットで、再生可能エネルギー事業からの1973メガワットを含む」

 「過去2年間で、設備投資(CAPEX)の90%が、より環境に配慮した事業ポートフォリオに対して実施された。エネルギー需要が高まり、政府が政策で支援している市場で、環境に優しい技術が活用されている分野に投資する機会を模索してきた」

■EVフェリー参入

 ――自動車部品大手サクンCグループなどと提携し、EVフェリー製造に参入した。動力源にリチウムイオン電池を採用した理由は。

 「スマートエネルギー全体の問題解決型供給者として、リチウムイオン電池に限定せず、顧客に最適な技術を提供しているかを確認する必要がある」

 「リチウムイオン電池は、他のバッテリー技術と比較して、軽量、安定性、長寿命、高エネルギー密度、高電力密度など、多くの望ましい特性を備えた先進的な技術だ」

 「われわれは、リチウムイオン電池生産やエネルギー貯蔵アプリケーションの研究・開発を行うハイテク企業デュラパワーホールディングスに47%出資している。同社工場では、25年にリチウムイオン電池の生産ラインの規模を最大3ギガワット時まで拡張することができる」

 「デュラパワーは世界20カ国に事業拠点を置き、40以上の国際特許を保有している。デュラパワーの実力を示すものとして、EVフェリー『バンプーネクストeフェリー』がある。デュラパワー製の大容量625キロワット時リチウムイオン電池を搭載した、タイ初の水上観光用電動フェリーだ」

 (注)グループ全体での石炭生産量は年間3億5300万トン、保有量は7億1300万トン(20年12月末時点)。20年売上高は22億8300万ドル(邦貨換算2579億円)。

■25年までに100隻

 ――新型コロナウイルス感染拡大が観光業に大きな影響を与えている。電動フェリーの目標販売数や、旅行会社プーケットパトリツアーとの協力関係について教えてほしい。

 「政府の観光復興計画の一環として、ロックダウン(都市封鎖)が緩和に向かう中、プーケットに再び戻ってくる観光客に新たな体験をもたらしたい。電動フェリーを利用したツアーを企画・実施することは、持続可能性で観光を豊かにし、地域社会と環境への長期的な影響を考慮した質の高い観光に強い支えとなるだろう」

 「クライアントであるフェリー運航者のメリットは、ESG原則(環境、社会、ガバナンス)での投資対象の一部となり、長期的な運航費用を節約できる。観光客も環境に優しい旅行を楽しむことができる」

 「現在2隻目のボートを開発中で、2022年中に完成する予定だ。観光需要が回復すれば、EVフェリーのビジネスと観光業は、21年10―12月から来年にかけて、徐々に良くなるだろう。 25年までに100隻のEVフェリーを増やすことを目標としている」

■シェア経済重視

 ――今後のモビリティーサービスの全体像を教えてほしい。

 「われわれのeモビリティーサービスは、消費者が購入ではなくリース商品やサービスを好むというシェアリングエコノミーのトレンドに対応している。新しいサービスにより、利便性と低コスト、短時間という条件と同時に、環境への配慮を求める現代消費者のニーズに応える。単一のアプリケーション内で、リアルタイムでの移動のモニタリングから他のサービスまで、デジタルプラットフォーム(PF)を通じて使いやすさを提供する」

 「われわれのeモビリティーサービスは、タイ初の包括的MaaSの完全統合プロバイダーと見なされている。トゥクトゥクタクシー 『MuvMi e-TukTuk』のようなライドシェア、アプリケーションを通じて車両を貸し出すカーシェア、EV車両管理・バッテリー管理PF(プラットフォーム)、タイ初のマリンツアー用EVフェリーなどの代替モビリティーサービスを提供する」

 ――自動車産業では、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)対応が重要になっている。モビリティー全体で今後の動向をどう考えるか。

 「冒頭述べたように、エネルギー消費の世界的なメガトレンドは3D(脱炭素化、分散化、デジタル化)に変わりつつある。この消費トレンドに関する調査と、現代のビジネス手法から、海外でもタイ市場でも、『シェアリングエコノミー』の隆盛を認識している。消費者は、利便性、柔軟性、調整の簡便さを好む。彼らはすぐに考えを変え、長期的な約束事を回避するために固定資産に投資することをもはや望んでいない。25年には、世界の経済価値の50%以上がシェアリングエコノミーのレンタル事業からもたらされるとの予想もある」

 「タイでは、国家エネルギー政策委員会(NEPC、委員長=プラユット首相)の国家エネルギー計画に従い、65―70年までCO2(二酸化炭素)排出量をゼロに削減するという目標が設定されている。ZEV100政策では、35年までにEV使用率100%という目標が推進される予定だ」

 「シェアリングエコノミーのトレンドに沿って、新世代の消費者が求めるあらゆるニーズを満たすよう努めている。われわれは、人々がeモビリティー社会の一員として、環境に配慮したより良い生活を送ることができるよう、適切な代替手段を提供する。環境汚染の削減、海洋生態系の保護、社会生活の質の向上と持続可能性の創出、スマートシティーの開発の推進などに役立つ電気自動車の使用をサポートする」

 「EVフェリーも、あらゆるタイプの移動に応えるという、MaaSの代替モビリティーシステムにとって不可欠な要素だ。われわれはグリーンツーリズムを活用し、新世代の消費者のために安全で便利で環境に優しい旅行を促進するとともに、電気自動車産業の持続的な成長を支援することを目標としている」

 Somruedee Chaimongkol 79年バンコク大会計学部卒。83年バンプー入社。06年タイ取締役協会主催の取締役コース修了、CFO(最高財務責任者)就任。15年から現職。英字紙バンコクポストが選ぶ「2021年の女性経営者」の1人でもある。